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年間8.6万トンのごみ処理―佐世保市の環境行政が直面する課題と成果

年間8.6万トンのごみ処理―佐世保市の環境行政が直面する課題と成果

佐世保市では毎年、約8.6万トンものごみが搬入され、処理されています。人口約23万人の地方都市が、どのように大量の廃棄物を処理し、リサイクルに取り組んでいるのか。令和6年版統計書のデータから、その実態を探ります。

目次

8.6万トン―市民一人当たり年間370kg

令和5年度の佐世保市のごみ搬入量は約86,000トンです。これを人口23万人で割ると、市民一人当たり年間約370kg、1日当たり約1kgのごみを出している計算になります。

ごみの内訳を見ると:

  • 燃やせるごみ:約78,570トン(91%)
  • 燃やせないごみ:約4,356トン(5%)
  • 資源物:約3,236トン(4%)

圧倒的に多いのは燃やせるごみで、全体の9割以上を占めています。これは生ごみ、紙類、プラスチック類などが含まれます。

📊 インサイト:燃やせるごみの内訳変化

興味深いのは、燃やせるごみの中で「持込」の割合が増加していることです。令和元年度は収集34,289トン・持込42,764トンでしたが、令和3年度には収集33,356トン・持込45,214トンと、持込が増えています。

これは、事業系ごみや大型ごみの持込が増加している可能性があります。また、市民が自ら処理施設に持ち込むケースが増えていることも示唆されます。

焼却処理7.8万トンの処理能力

佐世保市では年間約78,000トンのごみを焼却処理しています。1日当たりに換算すると約214トン。これは10トントラック約20台分に相当する膨大な量です。

焼却後には:

  • 焼却灰:約3,787トン(焼却量の約5%)
  • 埋立処分:約3,992トン

焼却によってごみの体積は大幅に減少しますが、それでも年間約4,000トンの焼却灰や残渣が埋立処分されています。

資源物回収の課題

資源物の搬入量は令和元年度の3,605トンから令和5年度は3,236トンへと369トン減少(10%減)しています。これは:

  • 人口減少による絶対量の減少
  • ペットボトルなどの軽量化
  • デジタル化による紙ごみの減少
  • リサイクル意識の変化

などが要因として考えられます。資源物の減少は、一見すると「ごみの減量化が進んでいる」ようにも見えますが、リサイクル率の低下につながる懸念もあります。

♻️ リサイクルの現状

燃やせないごみの中から、破砕後に資源回収される量は年間約1,000トン前後です。これは燃やせないごみ全体の約20~25%に相当します。

金属類や一部のプラスチックが資源として回収され、再利用されています。この資源回収システムは、埋立地の延命にも貢献しています。

埋立地の残容量―将来への懸念

「ピット残量」(埋立地の残容量)のデータを見ると、令和5年度は約2,267トンとなっています。年間の埋立量が約4,000トンであることを考えると、このままでは数年で容量が不足する可能性があります。

埋立地の確保は、廃棄物行政の最重要課題の一つです。新たな埋立地の確保は環境への影響や住民の理解など、多くのハードルがあります。

人口減少時代のごみ処理

佐世保市の人口は減少傾向にあります。それにもかかわらず、ごみの総量はほぼ横ばいです。これは何を意味するのでしょうか?

  • 一人当たりのごみ量は増加傾向
  • 高齢化により、介護・医療関係の廃棄物が増加
  • 単身世帯の増加で、包装ごみが増加
  • 事業系ごみの比率が高まっている

人口が減ってもごみが減らない、という「ごみと人口の乖離」が進行しています。

環境負荷の低減に向けて

佐世保市のごみ処理体制は、焼却・埋立を中心とした従来型のシステムです。今後の課題は:

  • 3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進
  • 食品ロスの削減
  • プラスチックごみの削減
  • 事業系ごみの適正処理
  • 埋立地の延命策

特に、燃やせるごみの削減が重要です。生ごみの堆肥化、紙ごみの分別徹底、プラスチックの分別リサイクルなど、市民一人ひとりの取り組みが求められます。

し尿処理との連携

ごみ処理と並んで重要なのが、し尿処理です。佐世保市では年間約116,000kℓのし尿・浄化槽汚泥を処理しています。

し尿処理の内訳を見ると:

  • し尿:約71,000kℓ(61%)
  • 浄化槽汚泥:約41,000kℓ(35%)

下水道普及率の向上により、し尿処理量は年々減少傾向にあります。これは都市衛生の向上を示す重要な指標です。

🏭 処理施設の役割

佐世保市の廃棄物処理を支えているのは、クリーンピュアとどろき(し尿処理)や焼却施設などの処理インフラです。これらの施設は24時間365日稼働し、市民の快適な生活を支えています。

老朽化した施設の更新や、より環境負荷の低い処理技術の導入が、今後の課題となります。

未来への展望―循環型社会を目指して

年間8.6万トンのごみ処理は、決して小さな課題ではありません。焼却施設の維持管理費、埋立地の確保、職員の人件費など、膨大なコストがかかっています。

持続可能な廃棄物処理システムを構築するには:

  • ごみの発生抑制(リデュース)を最優先
  • リサイクル率の向上
  • エネルギー回収(焼却熱の活用)
  • 最終処分量の削減

が不可欠です。佐世保市の環境行政は、経済性と環境保全のバランスを取りながら、循環型社会の実現を目指しています。

統計データは、その取り組みの現状と課題を、数字という客観的な形で示してくれているのです。

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