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年間421億円の建築投資:佐世保の都市開発から見える経済の鼓動

年間421億円の建築投資:佐世保の都市開発から見える経済の鼓動

住宅だけではありません。商業施設、工場、倉庫――様々な建築物が、毎年佐世保の街に生まれています。用途別着工建築物のデータから、都市の「今」が見えてきます。

目次

年間858件、総額421億円の建築ラッシュ

令和5年度、佐世保市では858件の建築物が着工され、その工事予定額は総額約421億円に達しました。

この内訳は:

  • 住宅専用:713件、約195億円(46.3%)
  • 住宅産業併用:15件、約62億円(14.7%)
  • 産業用:130件、約164億円(39.0%)

注目すべきは、産業用建築物の工事予定額が約164億円と、住宅専用を下回るものの、件数比(15.2%)に比べて金額比(39.0%)が大きいことです。これは、産業用建築が1件あたりの規模が大きい(平均約1.26億円)ことを示しています。

💡 産業用建築の躍進

産業用建築の工事予定額の推移を見ると:

  • 令和元年度:約179億円
  • 令和2年度:約75億円(コロナ禍で激減)
  • 令和3年度:約93億円
  • 令和4年度:約101億円
  • 令和5年度:約165億円(63.4%増

令和5年度の急増は、佐世保で大型の産業施設建設が行われたことを示唆しています。工場、物流センター、商業施設など、雇用を生み出す施設の建設は、地域経済にとって重要です。

1件あたりの建築費:規模の違いが明確に

1件あたりの平均工事予定額を計算すると:

  • 住宅専用:約2,740万円/件
  • 住宅産業併用:約4,130万円/件
  • 産業用:約1億2,652万円/件

産業用建築物の1件あたり規模は、住宅専用の約4.6倍。これは、工場や倉庫、大型商業施設などが含まれるためです。

住宅産業併用建築物の謎

前述の通り、令和5年度は住宅産業併用建築物が15件、約62億円と急増しました。これは1件あたり約4.1億円という大規模なものです。

考えられる具体例:

  • 1階が店舗、2階以上が住宅のマンション
  • 1階がクリニック、2-3階が医師の住居
  • 商店街の再開発ビル

おそらく、大規模な複合ビルが数件建設されたと推測されます。四ヶ町や京町などの中心市街地再開発の可能性もあります。

🏗️ コロナ禍からの回復

総工事予定額の推移を見ると、佐世保の建築市場がコロナ禍から力強く回復していることが分かります:

  • 令和元年度:約397億円
  • 令和2年度:約227億円(42.8%減
  • 令和3年度:約307億円
  • 令和4年度:約331億円
  • 令和5年度:約422億円(コロナ前を超える

令和5年度の工事予定額は、令和元年度を上回りました。これは、延期されていた プロジェクトの実施や、新たな投資が活発化していることを示しています。

産業用建築130件の中身

産業用建築130件には、様々な用途が含まれます:

  • 工場・製造施設:食品加工、機械製造、造船関連など
  • 倉庫・物流施設:Eコマースの拡大で需要増
  • 商業施設:スーパー、ドラッグストア、飲食店など
  • 事務所・オフィス:企業の支店、営業所など
  • ホテル・宿泊施設:観光需要の回復
  • 医療・福祉施設:クリニック、介護施設など

佐世保の産業構造を反映して、造船関連施設や海上自衛隊関連の建築物も含まれている可能性があります。

建築許可制度が捉える都市の動き

この統計は「建築基準法上、確認申請を要する建築物」のデータです。つまり、一定規模以上の建築物はすべて捕捉されています。

逆に言えば、小規模な改修工事や、確認申請不要な建築物は含まれていません。実際の建築活動は、この数字よりもさらに大きいと考えられます。

📊 地域経済への波及効果

年間421億円の建築投資は、佐世保経済に大きな波及効果をもたらします:

直接効果:

  • 建設業者の売上・雇用
  • 建材メーカーへの発注
  • 設計事務所の業務

間接効果:

  • 完成後の雇用創出(特に産業用建築)
  • 固定資産税収入の増加
  • 周辺商業への波及
  • 人口流入の可能性

経済波及効果は、直接投資額の1.5〜2倍と言われます。421億円 × 1.5 = 約632億円の経済効果が推定されます。

今後の展望:2024年問題と建築業界

建築業界は今、大きな転換期を迎えています:

追い風:

  • 老朽インフラの更新需要
  • 脱炭素化に伴う建て替え需要
  • 物流施設の拡大
  • 医療・福祉施設の需要

向かい風:

  • 人口減少による住宅需要の縮小
  • 建設業の人手不足
  • 資材価格の高騰
  • 2024年問題(働き方改革による労働時間規制)

令和5年度の421億円という高水準が今後も続くかは不透明です。しかし、少なくとも短期的には、年間350〜400億円規模の建築投資は継続すると予想されます。

データが語る佐世保の未来

用途別着工建築物のデータは、単なる数字の羅列ではありません。そこには:

  • 企業の投資意欲
  • 市民の住宅需要
  • 都市計画の方向性
  • 経済の活力

といった、都市の「今」と「未来」が刻まれています。

年間858件、421億円の建築活動――この数字が示すのは、佐世保が今も「動き続けている都市」だということです。人口は減少しても、街は進化し続けています。

データ出典:佐世保市統計書(令和6年版)

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