持ち家率62.8%:佐世保市民の住まい方から見える価値観
「マイホームは夢」――そんな時代は過去のものになったのでしょうか?佐世保市民の住まい方を、国勢調査のデータから読み解きます。
持ち家率62.8%:佐世保市民の3人に2人は「家を所有」
令和2年の国勢調査によれば、佐世保市の一般世帯101,838世帯のうち、63,942世帯(62.8%)が持ち家に住んでいます。
この数字をどう見るべきでしょうか?全国平均の持ち家率は約61%なので、佐世保はやや高めと言えます。地方都市として、マイホーム志向が根強いことが分かります。
借家世帯の内訳:公営vs民営
一方、借家に住む世帯は約37%。その内訳を見ると:
- 公営・都市再生機構・公社の借家:4,850世帯(4.8%)
- 民営の借家:28,734世帯(28.2%)
- 給与住宅:3,311世帯(3.3%)
- 間借り:146世帯(0.1%)
公営住宅の割合が4.8%と低いのは、前述の通り市営住宅が徐々に削減されていることと関連しています。
💡 給与住宅3,311世帯の意味
給与住宅とは、勤務先から提供される社宅や公務員住宅のことです。3,311世帯(3.3%)という数字は、佐世保に:
- 大手企業の社宅
- 自衛隊の官舎
- 公務員住宅
が一定数存在することを示しています。特に、海上自衛隊佐世保基地を擁する佐世保では、官舎の影響が大きいと考えられます。
地区別の違い:本庁と周辺地域
佐世保市は広域で、地区ごとに住宅事情が大きく異なります。残念ながら詳細な地区別データは限られていますが、一般的な傾向として:
中心部(本庁地区):
- 持ち家率:やや低い(推定55-60%)
- 民営の借家が多い(アパート、マンション)
- 利便性重視の若年層が多い
郊外(早岐、大野、相浦など):
- 持ち家率:高い(推定65-75%)
- 一戸建てが中心
- 子育て世代、高齢者が多い
旧町(江迎、鹿町、世知原など):
- 持ち家率:非常に高い(推定75%以上)
- 代々受け継ぐ住宅が多い
- 高齢化が進行
「住宅以外に住む」1,046世帯の実態
興味深いのは、「住宅以外に住む一般世帯」が1,046世帯(1.0%)存在することです。
これには以下のようなケースが含まれます:
- 会社の事務所や店舗の一角に居住
- 工場や倉庫の管理人室
- 寺社の庫裏(くり)
- 船舶に居住
港町・佐世保ならではの「船舶居住」も含まれているかもしれません。
🏘️ 持ち家のメリット・デメリット
持ち家率62.8%という数字は、佐世保市民の多くが「マイホーム」を選んでいることを示しています。
持ち家のメリット:
- 老後の住居の安心感
- 資産としての価値
- 自由なリフォーム・改築
- 住宅ローン完済後は住居費が低い
持ち家のデメリット:
- 初期費用が大きい(頭金、諸費用)
- 維持管理の責任と費用
- 転居の自由度が低い
- 災害リスクを全て負う
人口減少時代、住宅は必ずしも「資産」ではなくなりつつあります。それでも佐世保市民の3人に2人が持ち家を選ぶのは、「住の安定」への強い志向の表れと言えるでしょう。
世代別の住まい方の違い
国勢調査の詳細データ(本統計書には未掲載)によれば、全国的な傾向として:
若年層(20-30代):
- 借家が中心(70-80%)
- アパート、マンションが多い
- 結婚・出産を機に持ち家検討
中年層(40-50代):
- 持ち家率が上昇(60-70%)
- 住宅ローン返済中
- 子育てのため広い住宅
高齢層(60代以上):
- 持ち家率が最も高い(80%以上)
- ローン完済済みが多い
- 住宅の老朽化が課題
佐世保も同様の傾向と考えられ、全体の持ち家率62.8%は、これら世代の平均値です。
空き家問題との関連
持ち家率が高いことは、必ずしも良いことばかりではありません。人口減少が進む佐世保では、空き家の増加が深刻な問題となっています。
高齢者が施設入所や死去した後、相続した子どもが他都市に住んでいて空き家になる――こんなケースが増えています。
持ち家率62.8%という数字の裏には、将来の空き家予備軍も含まれているのです。
🔮 これからの「住まい方」
人口減少・高齢化が進む佐世保で、これからの住まい方はどう変わるでしょうか?
予想されるトレンド:
- 持ち家率の低下:若年層の減少と経済的理由で、徐々に低下
- シェアハウスの増加:単身高齢者向けのシェア居住
- サービス付き高齢者住宅:持ち家を手放し、見守りサービスのある賃貸へ
- 中古住宅市場の活性化:新築にこだわらない若年層
- リバースモーゲージ:自宅を担保に老後資金を調達
「一生に一度のマイホーム」から「ライフステージに合わせた柔軟な住まい方」へ――そんな時代が佐世保にも訪れつつあります。
データ出典:佐世保市統計書(令和6年版)
