町別で見る下水道普及格差:江迎・鹿町地域の整備が今後の課題
佐世保市全体の水洗化率は92.6%と高い水準にありますが、町別のデータを見ると、地域によって大きな格差があることがわかります。令和6年版佐世保市統計書の町別下水道普及状況から、佐世保市の下水道整備の実態を探ります。
本庁管内はほぼ100%の普及率
佐世保市の中心部である本庁管内では、ほぼすべての地域で下水道が整備されています。天神、東浜、大宮、島瀬などの市街地はもちろん、住宅地でも高い普及率を誇っています。
例えば、天神一丁目から五丁目、東浜町、大宮町など、主要な市街地では区域内のすべての戸数で下水道が利用可能となっており、快適な都市生活の基盤が整っています。
中心市街地での下水道普及は、単に生活環境の向上だけでなく、商業施設や飲食店の営業にも不可欠なインフラです。佐世保の中心部が商業都市として発展できた背景には、こうした都市基盤の整備があったと言えるでしょう。
江迎・鹿町地域は未整備地域が多数
一方で、合併により佐世保市に編入された江迎町や鹿町町の地域では、状況が大きく異なります。
江迎町のデータを見ると、多くの地域で「-」(未整備)となっています。整備されている地域でも、水洗化率にばらつきがあります:
- 江迎町中尾:56戸中44件施工、水洗化率78.6%
- 江迎町長坂:218戸中165件施工、水洗化率75.7%
- 江迎町上川内:39戸中32件施工、水洗化率82.1%
- 江迎町三浦:167戸中152件施工、水洗化率91.0%
- 江迎町赤坂:95戸中90件施工、水洗化率94.7%
同様に、鹿町町でもほとんどの地域が「-」(未整備)となっており、下水道整備が大きな課題となっています。
小佐々地域も未整備
小佐々町の各地域(黒石、小坂、臼ノ浦、田原、平原、岳ノ木場、西川内、楠泊、矢岳、葛籠)も、すべて「-」(未整備)となっています。
これらの地域では、合併浄化槽など、個別の処理方式に頼っているのが現状です。公共下水道の整備には多額の費用がかかるため、人口密度の低い地域では整備が進みにくいという課題があります。
人口密度の低い地域では、公共下水道の整備よりも、高度処理型合併浄化槽の設置を支援する方が効率的な場合もあります。佐世保市でも、地域の特性に応じた下水処理方式の選択が重要です。環境保全と経済性のバランスを考えた、地域ごとの最適解を見つけることが求められています。
水洗化率の地域差が意味するもの
江迎町の整備済み地域でも、水洗化率は75%台から90%台まで幅があります。これは、下水道が整備されても、すぐにすべての家庭が接続するわけではないことを示しています。
接続工事の費用負担、高齢者世帯での対応の難しさ、合併浄化槽からの切り替えの手間など、様々な要因が考えられます。整備だけでなく、接続率を上げるための支援策も重要です。
公平な生活環境整備に向けて
佐世保市全体の水洗化率92.6%という数字の裏には、地域による大きな格差が隠れています。中心部では当たり前の下水道が、周辺地域では未整備という現実があります。
今後、人口減少が進む中で、すべての地域に公共下水道を整備することは現実的ではないかもしれません。しかし、市民の生活環境の質を公平に保つためには、地域の実情に応じた適切な下水処理方式の選択と支援が必要です。
今後の下水道政策では、「どこまで公共下水道を整備するか」という難しい判断が求められます。人口密度、地形、既存の処理方式、財政状況などを総合的に勘案し、公共下水道、農業集落排水、合併浄化槽など、地域に最適な方式を選択していく必要があります。重要なのは、どの地域に住んでいても、環境に配慮された適切な下水処理が行われることです。
データ出典:令和6年版佐世保市統計書(第35回)「06_ガス及び水道 C_下水道 03_町別下水道普及状況」
資料:水道局下水道事業課(令和6年3月31日現在)
注:「-」は公共下水道未整備地域を示す
