知られざる畜産の町:平町が佐世保の肉用牛生産の3割を担う理由
佐世保市と聞いて畜産業を思い浮かべる人は少ないかもしれません。しかし、令和6年版佐世保市統計書のデータを詳しく見ると、地域ごとに特色ある畜産業が営まれていることが分かります。特に注目すべきは、平町の肉用牛生産です。
238経営体が支える5,785頭の肉用牛
令和2年2月時点で、佐世保市全体では238の経営体が5,785頭の肉用牛を飼養しています。これは1経営体あたり平均約24頭という計算になりますが、実際には地域によって大きな差があります。
平町だけで68経営体が1,723頭を飼養しており、これは佐世保市全体の約30%に相当します。1経営体あたり平均25.3頭と、市全体の平均を上回る規模で経営されています。
地域特性が生む畜産の多様性
佐世保市の畜産業は、肉用牛だけではありません。乳用牛、豚、採卵鶏、ブロイラーまで、多様な家畜が飼養されています。
乳用牛は17経営体で1,081頭が飼養されており、その約6割が佐世保市中心部(旧佐世保市と柚木村)に集中しています。これは、都市近郊という立地を活かした酪農経営が行われていることを示しています。
一方、肉用牛は平町のほか、鹿町町(16経営体、575頭)、江迎町(35経営体、507頭)、世知原町(30経営体)など、比較的広い土地が確保できる地域で盛んです。
なぜ平町で肉用牛生産が盛んなのか
平町が肉用牛生産の中心地となっている背景には、いくつかの要因が考えられます:
- 広大な土地:肉用牛の飼養には広い牧草地や飼料用作物の栽培地が必要です
- 歴史的背景:代々続く畜産農家のノウハウと地域のネットワーク
- 地理的条件:適度な気候と水資源に恵まれた環境
- 経営の効率化:ある程度の規模を持つ経営体が集積することで、飼料の共同購入や情報交換が活発化
小規模ながら存在感を示す養鶏業
データを見ると、採卵鶏とブロイラーの経営体は限られていますが、それぞれの飼養羽数は秘匿情報(X)となっています。これは、少数の経営体が大規模な養鶏を行っていることを示唆しており、個別の経営情報保護の観点から具体的な数値が伏せられているのです。
238の肉用牛経営体という数は決して多くありませんが、各地域に分散して存在していることは、リスク分散の観点からも望ましい状況です。また、都市近郊の酪農と、郊外での肉用牛生産という役割分担も、効率的な土地利用を実現しています。
データが示す未来への課題
佐世保の畜産業は、地域ごとの特性を活かした多様な経営が行われていることが分かりました。しかし、全国的な課題である後継者不足や飼料価格の高騰は、佐世保も例外ではありません。
今後、地域ブランドの確立や6次産業化の推進、さらには観光との連携など、新たな価値創造が求められています。平町をはじめとする各地域の畜産業が、次の世代にどのように引き継がれていくのか、次回のセンサスデータが注目されます。
データ出典:令和6年版佐世保市統計書(第35回)「03_農業及び水産業 A_農林業 06_家畜飼養経営体数及び頭羽数」
資料:農林水産省「2020年農林業センサス」
注記:「X」は秘匿情報を示します。個別経営体の情報保護のため、具体的な数値は公表されていません。
