年間3500人超の死亡―死因データが示す佐世保市民の健康課題
佐世保市では毎年、約3,500人が亡くなっています。令和5年の死亡者数は3,541人で、5年前の令和元年(3,269人)から約270人増加しました。死因別データを分析すると、佐世保市民が直面する健康課題が浮かび上がってきます。
増え続ける死亡者数―自然減の拡大
佐世保市の死亡者数は、5年間で着実に増加しています:
- 令和元年:3,269人(死亡率13.2‰)
- 令和2年:3,285人(死亡率13.5‰)
- 令和3年:3,379人(死亡率14.1‰)
- 令和4年:3,451人(死亡率14.5‰)
- 令和5年:3,541人(死亡率推定14.9‰)
一方、出生数は令和元年の1,947人から令和5年は1,600人台へ急減しており、自然減(死亡-出生)は年間約1,900人に達しています。これは人口の約0.8%に相当し、出生だけでは人口減少を補えない状況です。
📊 インサイト:高齢化が死亡者数を押し上げる
死亡者数の増加は、主に高齢化の進行によるものです。60歳以上の死亡者が全体の大部分を占めており、今後も高齢者人口の増加に伴い、死亡者数は増え続けると予測されます。
これは決してネガティブなことばかりではありません。医療の進歩により、多くの人が長生きできるようになった結果でもあります。
主要死因トップ3―がん・心疾患・老衰
佐世保市民の主要死因(令和5年推定)を見ると:
- 悪性新生物(がん):約800~900人(全体の約25%)
- 心疾患:約500~600人(全体の約15%)
- 老衰:約400~500人(全体の約12%)
- 脳血管疾患:約300~400人(全体の約10%)
- 肺炎:約200~300人(全体の約8%)
この順位は、全国的な傾向とほぼ一致しています。注目すべきは、「老衰」が第3位に位置していることです。これは、病気ではなく自然な老いによる死亡が増えていることを示しています。
がん対策の重要性
がん(悪性新生物)は、依然として佐世保市民の最大の死因です。がん死亡を減らすには:
- がん検診の受診率向上:早期発見・早期治療
- 生活習慣の改善:禁煙、節酒、バランスの良い食事、運動
- がん治療の充実:専門医療機関の整備
- 緩和ケアの推進:QOL(生活の質)の維持
が重要です。佐世保市内には、がん診療連携拠点病院があり、高度ながん医療を提供していますが、検診受診率の向上が今後の大きな課題です。
🏥 心疾患・脳血管疾患への対策
心疾患と脳血管疾患を合わせると、全死亡の約25%を占めます。これらは「循環器疾患」として、共通のリスク因子があります:
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(高コレステロール)
- 喫煙
- 肥満
これらの生活習慣病対策が、心疾患・脳血管疾患の予防につながります。定期的な健康診断と、生活習慣の改善が重要です。
「老衰」増加が示す医療の変化
「老衰」による死亡が増加しているのは、医療に対する考え方の変化を反映しています:
- 過度な延命治療を控える傾向
- 「自然な死」を受け入れる価値観の広がり
- 在宅医療・緩和ケアの充実
- 「尊厳死」「平穏死」への理解
かつては「肺炎」や「心不全」と診断されていたケースが、現在は「老衰」として扱われることも増えています。これは、人生の最期をどう迎えるかという、社会全体の意識変化を示しています。
感染症対策の成果と課題
感染症による死亡は、全体としては少数ですが:
- 結核:年間1~3人
- 敗血症:年間約25人
- インフルエンザ:年間数人~十数人
結核による死亡が少ないのは、結核対策の成果です。新登録者数も年間約30人前後と低い水準に抑えられています。
COVID-19の影響については、データの詳細は不明ですが、令和2~4年の死亡者数増加の一因となっている可能性があります。
年齢階級別死亡の特徴
年齢階級別の死亡者数を見ると、60歳以上が全体の約90%を占めています。特に80歳以上の死亡者が最も多く、高齢化の影響が顕著です。
一方、若年層(40歳未満)の死亡は年間数十人程度と少なく、乳幼児死亡率も極めて低い水準です。これは、日本の医療水準の高さを示しています。
健康寿命の延伸に向けて
死亡者数の増加は避けられませんが、重要なのは「健康寿命」の延伸です。つまり、「長生き」だけでなく「健康に長生き」することです。
健康寿命を延ばすための取り組み:
- 生活習慣病予防:特定健診・特定保健指導の受診
- がん検診:胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん検診
- 運動習慣:ウォーキング、体操、スポーツ
- 栄養バランス:減塩、野菜摂取、バランスの良い食事
- 社会参加:孤立防止、地域活動への参加
- 認知症予防:脳トレ、コミュニケーション
医療体制の充実
佐世保市の医療体制を見ると:
- 医師数:約719人(令和4年)
- 病院数:約20施設
- 診療所数:約180施設
人口10万人当たりの医師数は約312人で、全国平均(約260人)を上回っています。これは、佐世保市が医療資源に比較的恵まれた地域であることを示しています。
🩺 予防医療の重要性
統計データが示すのは、「予防に勝る治療なし」という原則の重要性です。がん、心疾患、脳血管疾患の多くは、生活習慣の改善と早期発見により、予防または軽症化が可能です。
市民一人ひとりが健康管理に取り組むことで、健康寿命を延ばし、医療費の削減にもつながります。
まとめ―データから見える未来
年間3,500人超の死亡というデータは、重い数字です。しかし、そこから見えてくるのは:
- 高齢化社会における医療・福祉の重要性
- 予防医療と健康づくりの必要性
- 人生の最期をどう迎えるかという価値観の変化
です。統計データは、佐世保市の現在の健康課題と未来への道筋を示してくれています。一人ひとりができることから始める―それが、健康長寿社会への第一歩です。
データ出典:佐世保市統計書(令和6年版)16-A-04, 16-A-07, 16-A-08
